Aya Kawazoe

ピアニスト川添文のホームページ

モスクワの英才教育

私は小さい頃から本が好きだ。今現在に輪をかけてボーッとしていた小学生の頃は、最寄りの駅から家までのバスの中で本を読んでいると、家を通り過ぎてまた駅まで戻っている、というようなことは日常茶飯事だった(循環バスでよかったね。)

そして小学生時の私の友達は図書館だったこともあり(?!)文庫本1ヶ月100冊にチャレンジしたりしていた。

 

ただまぁこの量に頼っているところから推察できる通り 読み方は荒くて、その頃読んでた本の内容はほとんど覚えてない…

 

あまりに残念すぎる読み方なので、さすがにだんだん本の読み方がブラッシュアップされて行き、最近は心の響いた文章のページを折り曲げたり(ピンとこなかった本は売るから、1ページも折らない。)、良かった本は必ず読み終わってから感想文をつらつらと書くようにしている。

 

 

 

そんな私の感想文を昨夜読み返していて、あぁ!!この本は本当に面白かったなぁ、、復刊してほしい!!という思いを込めて。今日は一記事書いてみます。


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『まあるいものさし』

朴久玲先生は 皆さんご存知ピアニストとしても先生としても有名で、ロシア語ペラペラでいらっしゃるので、昔から私はロシア人の先生のレッスンを受ける際に通訳していただいた記憶がある。


この本がとっても面白かった!!


一言で言えばロシア留学記、であるが 今のロシアとは大違い、、、ソビエト連邦、外国人留学生なんて全然居なくって留学生用のシステムなんてものは何もない。
冬はマイナス30度、日本に電話をかけるのも、電話ボックスまで極寒の中歩き、親に泣きながら電話、でも電話代も高くて全然話せない。

今の時代には考えもできないほどの孤独ですよね…

 

「物もいらない、お金もいらない、ただピアノが上手くなりたい」
何をしてても、ピアノを弾いていないと気分が落ち着かない気持ち、まわりのロシア人を見て、あの人は私が買えるものを買うことは出来ない、けど私はあの人のような演奏が出来ない。と思い沈み込む気持ち、それが買えることになんの意味もない、ただただ惨めになる気持ち。本当に私もよく分かり、それだけの焦燥感が芽生える環境に私も身を置きたいなぁという気持ちになったり。。

 

とにかく貪るように読んで、興味を持ったトピックがあった。


モスクワの英才教育についてである。

 

モスクワには2つ音楽大学がある。
モスクワ音楽院と、グネーシン音楽学校。
モスクワ音楽院はラフマニノフやスクリャービン、カプースチンといった作曲家も、アシュケナージやリヒテル、プレトニョフなんかも卒業生(卒業生を調べてみたら、もう著名な方居すぎてこのピックアップはちょっと酷いのですが。)の歴史ある学校ですが、実はこの学校 予備科というものがあって、これは6、7歳の子が小学校に入る前のための学校なのですが…それが凄かった😂

 

少し脱線しますがこの本を読んでいた当時、「最先端の教育」という本を図書館で読み(私はもともと0~6才ほどの子どもへの教育に非常~に興味があるのですが。)その中に、ダニングクルーガー効果の話で面白い話があった。
この"ダニングクルーガー効果"とは、「能力の低い者ほど自分の能力を過大評価してしまう認知バイアス」のことで、この本の中には
"自分は英語が出来る、と思ってる人は意外とあんまり出来ない"
という例えの時に出てきていた。確かに、それってどんな分野でも言えるかも…?素晴らしい人ほど謙虚だもんね。というか、心底自分のことをまだまだ未熟だと思ってそうな…

(※ちなみに「自分達って最高だよね」が合言葉の  自己評価めちゃくちゃ高い我々夫婦は、この認知バイアスについて初耳すぎてだいぶ沈黙流れた話、、はまた今度)

 

そしてそれを防ぐためには、明確な基準が必要なのではないか、という話になっていた。

 

例えば、関西国際学園の人によると、18歳でハーバードやイェールなどのアイビーリーグに入るには、小学校六年生の段階でだいたい英検一級くらいの英語力がないと難しいという。それが一つの基準になっているらしく、まぁもちろんアイビーリーグの場合は、英語力に加えて勉強以外の活動も重要視(例えば「子供の頃からずっと音楽をやっている」だったりとか)するらしいので一概には言えないが、
こういった"基準"って、ピアノの世界にもあるのではないか、と思ったのです。

 

話はモスクワ音楽院の予備科に戻りますが…

予備科の入試の課題曲がこちら


□バッハ インヴェンション
□ツェルニーの練習曲2曲
□ソナチネかソナタ全楽章
□チャイコフスキーやプロコフィエフなどの自由曲

 

これらに加え、和声の聞き取りや、先生が弾いたメロディーを覚えて歌う、なんて試験もあるらしい。


ちなみに皆様、お忘れではないでしょうか。これらを全て弾くのは6歳のお子様たちです!いや、神童!普通に神童。

 

自分の6歳時なんて思い返しちゃうと本当に笑っちゃうんですけど、公園で泥団子をとにかく永遠に作って、泥団子屋さんを開いていたような覚えしかない。いかにクオリティ高い泥団子が作れるか。公園の砂もサラサラ砂とずっしり砂を使い分け(名前とかあるのかしら?知らん)、遂には地面に落としても割れないようなSランクの泥団子をも作れるようになった(この話を夫にしたら、「あやちゃんが6歳の時YouTubeがあれば、Sランク泥団子の作り方で人気YouTuberになれたかもね?!」と言われた。完全に面白がられてるが、確かに、何かを極めること自体は今の時代、何に繋がるかわからない)。うん、無理だ…絶対無理だ。この内の1曲さえ弾けなかったでしょう。
でも世界で活躍するトップピアニスト目指したいならこのくらい出来ていないといけないのかしら。

 

素晴らしい演奏家を沢山輩出しているロシアには、小さい頃からの並々ならぬ努力と、刺激的で仲間がいる最高の周りの環境があるのだな、と思ったのでした。

日本もそんな小学校があったら良いのにね。絶対良いだろうな~。何よりも良いのは、同じ分野が好きな仲間がいる!ということ。

 

それにしても、先日のラヴェル本(こちら)も今日ご紹介したまあるいものさしも、絶版なのが大変に惜しい……私自身、こちら先生に貸していただいて読んだのです。入手したいけど…!!本当に音楽関連の本は素晴らしい本でもすぐに絶版になってしまいます。。


復刊してくれないかなぁ…そしたらみんなに読んでほしいです。